校長挨拶

多様性の中で育む

筑波大学附属駒場中・高等学校長 林 久喜

 駒場野公園内にある水田は、明治11年に開校した駒場農学校に赴任したドイツ人教師ケルネルが近代農法を伝えるために作ったことからケルネル田圃と呼ばれています。本校は、前身である東京農業教育専門学校附属中学校が設置された昭和22年からこの水田を使って米作りを行っており、中学校1年生と高校1年生が総合学習の中で1年を通じて米を生産しています。それは植物としてのイネの観察ではなく、また、田植え体験、収穫体験といった特定のものを切り取った作業体験でもなく、品種の選定から作期の設定、播種から管理・収穫・調製と、1年をかけて土と語り、作物を観察し、1粒の種を何百倍にも増やして食べるところまで実施する、農作物としての稲の栽培実習です。

 東京のど真ん中で、農学部の大学生ですら実施できないような本格的な水田実習が1年を通じて営まれています。総合学習という枠の中で、この学習範囲は環境問題や稲作文化にまで発展して学ぶこととなります。更には、生徒により生産されたこの米が、卒業式と入学式で、卒業生あるいは新入生に赤飯として振る舞われています。それは、先輩を送り出し、あるいは新入生を歓迎する、豊かな感性の醸成にもつながっています。
 水田学習以外にも各学年が特徴的な総合学習、校外学習を実施しており、生徒会・自治会活動、音楽祭・体育祭・文化祭などの学校行事、クラブ活動が、生徒自らの企画・立案に基づき自主的に実行されています。
 本校にとって個性的な生徒一人一人が宝です。それは入学時には原石なのですが、多様な生徒集団に、高い指導力を持つ教職員を含めた学校集団の中で、生徒が様々な活動に自主的に参加し、自ら運営することを通して、輝きを増し、発達していきます。目先の勉強ではなく、各自が将来の夢を確実に描き、それを具現化するための学力・能力・感性・社会力を身につけていくことが目標です。
 スーパーサイエンスハイスクールとしての活動や先導的教育拠点・国際教育拠点・教師教育拠点といった筑波大学附属学校としての三拠点構想の取り組み、筑波大学訪問を通じての幅広い専門分野の研究との接触、筑波大学との共同プロジェクトや筑駒アカデメイア(社会貢献プロジェクト)の実施、海外校との国際交流活動など、多様でユニークな取り組みを通して、全面的な人格形成につなげていきます。世界の多様な分野におけるトップリーダーの育成を目指して、大学の附属校としての強みを活かし、関連する組織が一体となって生徒を育んでいきたいと考えています。そして、生徒ひとりひとりの夢が将来実を結び、それが社会的な貢献を介して、世界が持続的に発展することを期待しています。