本校は、平成14年度〜18年度の5年間、研究主題「先駆的な科学者・技術者を育成するための中高一貫カリキュラム研究と教材開発」を掲げてSSH研究を行った。この研究成果を踏まえ、平成19年度からのSSHでは、先進的な科学的内容を互いに伝え合い、共有する“サイエンスコミュニケーション”能力の育成を目指し、生徒が獲得した高い科学的資質を伝え合い共有できる場の創設と、ノウハウの構築を試みる。研究内容の柱を以下に示す。
全校生徒を対象に実施する
5年計画の第1年次は,準備・リサーチ段階と位置づけ,研究内容の柱(ⅰ)(ⅱ)および(ⅴ)について,本格的に実施するための準備を進める。また,柱(ⅲ)および(ⅳ)については,これまでのSSH研究の評価をふまえ,継続的実践・改良・普及を進める。
第2年次は,試行段階と位置づけ,研究内容の柱(ⅰ)(ⅱ)および(ⅴ)について,本格的に実施するための準備を進めるとともに,一部内容を試行する。また,柱(ⅲ)および(ⅳ)については,これまでのSSH研究の評価をふまえ,継続的実践・改良・普及を進める。
第3年次は,研究を具体的に展開する。研究内容の柱(ⅰ)(ⅱ)および(ⅴ)についても,試行~本格的な実施に取り組む。また,柱(ⅲ)および(ⅳ)については,これまでのSSH研究の評価をふまえ,継続的実践・改良・普及を進める。
第4年次は,研究の深化・充実をはかる。すべての研究内容の柱について,第3年次までに開発した教材や教育方法をもとに本格的に展開し,評価を試みる。
第5年次は,研究の完結および発展期ととらえる。第4年次までの研究で得られた成果をもとに,開発した教材のプログラム化や他校でも活用できるような,より普遍的な教材・教育方法の開発に取り組む。
特になし
別紙(p.7)の通り
研究内容の柱(ⅰ)~(ⅴ)の順に示す。
校内プロジェクトI教育実践1および研究部を中心に、少人数制の授業に効果的な教育環境の充実、カリキュラムの作成、異学年交流を円滑に導入するための授業方法等の研究を継続し、下記のような発表・交流の実践を行った。
校内プロジェクトIII・教育支援1を中心に、北京師範大学附属実験中学との生徒研究交流会を実施した。また、生徒の国際科学オリンピック、科学コンクールへの参加の支援を行った。さらに、インターナショナル・サイエンス・フェアに生徒を派遣するとともに、筑波大学等の留学生との研究交流をはかった。
講演会・実験講座の内容を精選するとともに、低学年向けプログラムの充実をはかった。
「科学者の社会的責任」、「情報伝達」、「スポーツ科学」をテーマとした講演会を実施した。また「科学者の社会的責任」をテーマに広島でのフィールドワークを実施した。
以上のプログラムのうち、校内で行われた講座・講演会は、「サイエンス・コミッティ」(有志生徒組織)により、評価を受けた。評価に基づき次年度以降のプログラムの企画・運営を行う。
SSH5年間で開発してきた教材「統計」「微分方程式」等の授業を実施し、改良を試みた。全国のSSH校から教員の参加者を集めて課題研究に関する研究協議会を本校で開催した。和算をテーマとした教員向けワークショップを実施し、教育研究会でも教材の普及・教員間交流を行った。このほか、北海道札幌東陵高校での研修会を実施した。筑波大学大学院数理物質科学研究科の大学院生を受け入れ、教職インターンシップも実施した。
新しい実験教材を紹介する教員対象の実験研修会を化学科・生物科で企画・開催した。SSH5年間で開発した実験教材による授業実践を継続し、一層の改良を試みた。また、筑波大学大学院生命環境科学研究科大学院生を受け入れ、教職インターンシップを実施した。
メカニクス、エレクトロニクス、ITの3者が複合する学習プログラムとして、「1ボードマイクロコンピュータを用いた3Dプロッタ制御による製品設計と製作」をテーマとした高校生向けワークショップを実施した。
以下の内容について研究開発を行った。
これまで開発した高校での教材を踏まえた中・高をなめらかにつなげる中学生向け教材の開発(2)
これまで開発した高校での実験教材を踏まえた中学生を対象とした実験教材の開発(2)
科学的教材を利用した授業の実践と生徒の発表能力の向上をめざした。百科事典、科学的教材、論文などの文献収集を行い、それらを教材にした授業を展開した。
校内プロジェクトI教育実践1では、昨年度に引き続き、研究内容の柱(ⅰ)のサイエンスコミュニケーション能力育成に関わる研究・実践を行った。当初からの計画であった高校2年生が中学3年生を教えるスタイルの合同授業が、1回だけではあったが中3テーマ学習高2ゼミナール同時開講で一部実現した。高校2年生は、科学的コンテンツを「教える・伝える」という活動から一層の深い理解が求められることを実感した。意外にも中学3年生には身近な先輩からの指導を新鮮に受け止め意欲的に学習する効果が見られた。また、中学生、高校生が小学校の児童を教えた「サマースクール」も、同様にサイエンスコミュニケーション能力育成の良い機会となった。昨年度から立ち上がった生徒によるSSH評価・運営組織であるサイエンス・コミッティも、今年度は、学内のテーマ研究発表会の企画・運営を手がけたり、東京都SSH指定校合同研究発表会での運営補助を手がけたり、と活躍の場が一気に広まった。今後の生徒の主体的な取り組みが一層期待できそうである。
校内プロジェクトIII教育支援1では、研究内容の柱 (ⅱ)の国際交流プログラムを実施した。中国・北京師範大学附属実験中学との生徒の研究交流を実現させ、一歩前進した。その他、筑波大学の留学生や諸外国からの理数系教員訪問についても国際交流の良い機会として捉え、生徒との交流の場面をできるだけ設けるよう配慮した。
以上のような校内プロジェクトI,IIIを核とした研究開発は、校内における研究開発のスタイルという観点から見た場合、教科の枠を越えた取り組みとして、本校従来の教科中心型の研究開発から大きく脱却できたと言えよう。生徒主体の取り組みを重視したという点でも自己評価できる。
一方、研究内容の柱(iii)、(iv)、(v)については、これまでのSSHの成果を継承しつつ、教科中心の取り組みにより内容の精選・改良を進め、発展・普及に務めることができた。
来年度も今年度同様に中学3年生の総合学習「テーマ学習」と高校2年生の同「ゼミナール」の合同授業を一部実施し「ゼミナール」・「テーマ学習」間で異学年合同授業の試行を続ける予定である。小学生を教える「サマースクール」についても、中学生も指導者となれる場と位置づけて続けていきたい。また、生徒は教えあい学びあいを通して「より深く学ぶことができたか。」「その過程はどのようなものであったか。」について、効果的なアンケートを作成・実施し、教育的効果を検証していきたい。
北京師範大学附属実験中学との研究交流会については、来年度も実施したいと考えている。ただ、真の相互理解につながる交流会になるように実施時期や内容について改善すべき点も多い。特に発表テーマの選定については中国の生徒にとっても興味関心が持てるよう、専門性のあまり高くない、普段の授業に密着したものを選ぶなど工夫が必要であろう。また帰国後に参加した生徒が核となって国際交流の経験を他の生徒に広げてくれるよう、校内での事後指導の充実も図りたい。
来年度、校内プロジェクトは研究内容を継承しつつ、組織を大幅に変更する予定である。しかし、教科の枠を越えた取り組みの実行組織として今年度同様の位置づけを行い、特にサイエンスコミュニケーション育成のための少人数学習の研究と実践、国際交流研究活動の支援を研究開発重点項目として取り組んでいきたい。