d1.化学分野 理科実験研修会

1.仮説

平成14年度からの5年間にわたるSSH研究開発において、化学分野では分光光度計を活用した化学実験の教材開発を主として行ってきた。平成16年度には、本校理科の開発教材を紹介する実験書「先駆的な科学者・技術者を育成するための理科実験」を作成し、化学分野では8種の実験を紹介した(平成18年度、改訂版を発刊)。

今回の実験研修会では、フォトダイオード型紫外可視分光光度計(UV-VIS)を活用した酸塩基指示薬の電離指数測定実験、フーリエ変換型赤外分光光度計(FT-IR)を活用したエステルの合成と分析実験、LEDを使った光の3原色確認実験など紹介し、機器を活用した化学実験の普及を図るとともに、参加の先生方と情報交換を行い、今後の実験教材の改良に生かすことをねらいとした。

2.方法

2.1 「分光光度計を活用した化学実験」

日時:
2008年8月26日(火)13:00~17:00
場所:
本校化学実験室
参加者:
3名
(内訳)中・高等学校教員 3名

2.2 実験概略

実施した各実験のねらいと概要を、以下に示す。

実験1 エステルの短時間合成と赤外吸収スペクトル測定

FT-IRを用いると、液体試料なら1滴をATR装置のクリスタルに接触させるだけで、赤外吸収スペクトルを測定できる。この簡便な操作性を生かし、有機合成と赤外吸収スペクトル測定の入門実験を2時間(50分×2)で実施した。また、本校が導入したFT-IRはシングルビーム式のため、試料測定の前にバックグラウンドを測定し、大気補正を行う必要がある。この操作により、大気中の二酸化炭素や水蒸気の赤外吸収スペクトルを視認することができる。そこで、分子が赤外線を吸収するしくみについて解説し、赤外吸収スペクトルの学習の一環として分子の極性と温室効果ガスの性質についても考察した。この実験は、化学Ⅰ「有機化合物」の発展として扱うことができる。

実験2 酸・塩基指示薬の電離指数測定

酸・塩基指示薬は、それ自身が弱酸や弱塩基である。このため、溶液中の[H+]を変化させると電離平衡が移動して、溶液中の分子・イオン種の割合が変わる。鮮やかな変色は、これらの分子・イオン種が特有の色を持つためであり、その濃度はそれぞれのλmaxにおける吸光度測定により容易に求められる。こうした性質を生かし、UV-VISとpHメーターを活用して、酸・塩基指示薬の電離定数を求めた。この実験は、大学の学生実験としても実施されているが、条件([H+])変化による電離平衡の移動を視覚的に確認でき、抽象的概念である電離定数を実験から求められる点で、高校の教材として適している。この実験は、化学Ⅱ「化学平衡」の発展として扱うことができる。

実験3 LEDを用いた光の3原色確認実験

中央に置いた半透明シリコーンゴムを、赤・青・緑の3色のLEDを点灯させて3方向から照らし、ゴムが白色に見えるように調節する。次に、1色または2色LEDの光路をふさいで、ゴムの色がどのように変化するか観察した。この実験は、分光光度計を利用した化学実験の実施前に、分光シート等による光の観察などとともに、光の性質を調べる導入実験として利用できる。

3.検証

少人数の実施となったため、各実験をそれぞれ1人でじっくりと体験していただくことが出来た。また、和やかな雰囲気で実験を進めることができ、お互いの学校での実験授業の様子など、有意義な情報交換を行うことができた。

この実験研修会自体については、参加した先生方には、おおむね好意的な評価をいただいた。一方、今回は参加者が大幅に減少したことから、開催時期やテーマなどについては、再検討が必要だと考えられる。

(文責:化学科・梶山 正明)

d2.生物分野 実験研修会の実施 「キットを使わないPCR実験」

1.仮説

近年、スーパーサイエンスハイスクールを初めとする先進的な理科教育に意欲的な高等学校を中心にサーマルサイクラーの普及が進んできている。一方で大学やサーマルサイクラー・実験キット等のメーカーも教員対象のPCR実験の講習会を盛んに開催するようになってきている。PCR実験の本当の面白さや難しさは、利用するプライマーの設計や、アニーリング温度の設定など、実験の準備や条件決めである。しかし、こういった講習会では、手順通り試薬を混ぜていけば必ず結果が得られるよう最適のプライマーと最適な実験条件が用意されており、どちらかといえば、PCR実験の紹介を目的としているような印象を受けている。そこで、本校の実験研修会では、一昨年の実施と同様の、オリジナルのPCR実験を計画していく際に必要となる様々なノウハウについて、情報交換ができるような実験研修会の企画を心がけることにした。実施時期については、教員の研修が取りやすい夏期休業期間中に設定するよう変更した。

2.方法

2.1 「キットを使わないPCR実験」

日時:
2008年8月26日(火)13:00〜17:00
場所:
本校生物実験室
参加者数:
4名

2.2 実験概略

BioRad社の「pGLO バクテリア遺伝子組換えキット」に含まれるプラスミドpGLO、およびそのGFP領域の649bp分を欠失させたプラスミドpGΔ649(pGLOより自作:pGLOをHindIII切断後、セルフライゲーションさせたもの)で得られた形質転換体コロニーを材料にして、導入された遺伝子領域をPCRで増幅し、電気泳動で確認する。コントロールとして、形質転換していない宿主用大腸菌HB101のコロニーも用いる。

実験に用いたプライマーは、araC遺伝子領域を検出するプライマー、pGΔ649の欠失部分を検出するプライマー、pGΔ649の欠失部分をまたぐプライマーの3組である。

サーマルサイクラーの稼働時間を利用して、プライマー設計時に気をつけたいことを説明したり、プライマー設計に便利なフリーソフトウェア「FastPCR」の紹介を行ったりした。

プラスミドマップ
<実験結果の確認>
写真

3.検証

少人数の実験となったため、和やかな雰囲気で進めることができた。お互いに学校での実験授業の様子など情報交換も行うことができて意義を感じた。参加した先生方には「有意義であった」と労っていただいた。しかし、参加者が少ないことから時期、テーマなどについて再検討が必要であろう。こうした実験研修会そのものについても再考しなければならない。仮に今後も実施する場合、今回のようなJST経由の案内送付とWEB掲載以外の呼びかけも模索しなければならないだろう。

(文責:生物科・仲里友一)