生徒のサイエンスコミュニケーション能力育成のためには、受け身になりがちであった授業を、生徒どうしの「教えあい、学び合い」主体に切り替えることが有効ではないか。この仮説に基づき、生徒が指導者として、小学生向けに授業を実施する試みを計画した。また、評価については、昨年度に松嵜(数学科・現鳴門教育大学)が提案した「サイエンスコミュニケーションアンケート」をもとに、下記の3項目を中心にアンケートを実施した。
近隣の小学校である目黒区立駒場小学校では、夏休み期間に体験的活動を楽しむ「サマースクール」を実施している。本校では、昨年度より生徒が講師を務める「出前授業」の形で参加させていただいている。今年度実施した「出前授業」は、下記の3講座である。なお、駒場小学校では、今年度より授業時間確保のため夏休みが短縮されており、サマースクールも8月下旬に始まった2学期の授業の一環として実施された。
各授業とも高校生が指導を行ったが、事前の準備や当日の安全管理などについては、各部の顧問教諭が協力し、事故等が起こらないよう十分留意した。
実験主体の授業で、高校2年生2名、高校1年生5名が講師を務めた。実施にあたり、各実験の担当講師を部内で決定後、実験テキストを作成し、数回の予備実験によりテキストに修正を加えて、当日に備えた。
実験:木炭電池を作る
目的:木炭、アルミホイル、食塩水で電池をつくり、電子メロディを鳴らしてみる。
実験:乾電池を分解する!
目的:マンガン乾電池を分解してその構造を調べてみる。電池の構造の観察と①の結果を踏まえて、簡単に電池が電気を流すしくみを解説し、一緒に考える。
(この実験は,ラジオペンチを使用して電池を分解するので、小学生の力では難しく危険なので、各班担当の高校生がそれぞれ演示する方法を取った。)
実験1:金属がとける!?
目的:金属には塩酸にとけて泡を出すもの(亜鉛)と、とけないもの(銅)があることを知る。
実験2:電子のしくみって?
目的:泡が出た亜鉛と出なかった銅を塩酸に浸して接触させるとどうなるか。亜鉛と銅の間に電子メロディを入れるとどうなるか調べる。
実験3:もっといろんなもので電池はできる
目的:10円玉と1円玉、亜鉛板と銅板と果物または人間!でも電池ができることを調べる。
実験:銀鏡反応で鏡を作る!
目的:電気が外の導線を流れると電池ができるが、試験管の中でも電気が流れることがあり、電子不足の銀イオンが電子を受けとると銀ができて試験管に付着し、鏡になることを確かめる。
1.児童に対する説明について
多くの生徒が「どちらとも言えない」と回答
2.講座の準備について
日経サイエンス編「親と子の科学の冒険」,東工大HP,教科書,参考書
説明の準備,乾電池分解の練習,テキスト作成,実験器具・薬品の準備
全員が「活かされた」と回答
3.対象が小学生であることについて
全員が「意識できた」と回答
アンケート結果にもあるように、生徒は小学生を意識しつつ準備を行い、指導中もわかりやすい説明を心がけるとともに危険のないように注意を払って、立派に講師を務めることができた。一方、コミュニケーションのとりかたなど、実施してみて気付いた課題もあった。小学生に対するアンケート結果の詳細は、紙幅の関係で掲載できないが、ほぼ全員が「期待以上の内容だった」「お兄さんの説明はわかりやすかった」と回答してくれた。このサマースクールは、来年度も実施が決まっており、こちらから伝えたい内容の整理や小学生とのコミュニケーションのとりかたの工夫など改良を重ねて、より充実した実験講座が出来るよう進めていきたい。
中学生にも教える機会を作りたいと考えて、中高生物部の生徒に小学生対象の実験講座を計画させた。小学生に興味関心を持ってもらえるテーマで、かつて生物部が文化祭で演示実験をしたことのあるもの、夏の暑い時期であるが材料調達が難しくないもの、との観点から、“ブタの眼球の解剖”をテーマにすることにした。
教師が、指導者となる生物部員生徒に投げかけたポイントは以下の4点である。
指導者となる生徒たちが独自に準備したものは、眼球の内部構造を示す説明用の模造紙、配布プリント(原稿)、おみやげ(葉脈標本のしおり)であった。特におみやげを用意することを考えついたのは文化祭での経験がきっかけとなったようだ。
簡単な導入と実験のオリエンテーションを代表生徒が行った後、実験作業に進んだ。7名の本校生徒が1テーブルの小学生2〜4名の面倒を見る形で進められた。周到な予備実験や事前準備が功を奏し、解剖は驚くほどスムーズに進み、小学生はみな上手に解剖ができた。また、けがなどの事故も起こらなかった。最後に高校生が模造紙にまとめた図を用いて眼球の構造の解説を行って講座終了となった。
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指導にあたった本校生徒は、小学生児童とのコミュニケーションの取り方にかなり差が見られた。後半の講義では、本校生徒に今ひとつ達成感が得られていなかったようだ。しかし、この活動は上手い授業作りが目標ではない。一人一人の生徒全員が科学のコンテンツを的確に相手に伝える場面を多く設定できるような講座作りが必要であると実感した。今後もこの方針で続けてみたい。