生徒のサイエンスコミュニケーション能力育成のためには、これまで教員主導で実施してきたSSH事業を、生徒主体で計画・実施させることが有効ではないか。この仮説に基づき、生徒によるSSH企画・評価組織「サイエンスコミッティ」の活動を昨年度より開始した。昨年度のサイエンスコミッティでは、メンバーがさまざまなSSH事業に積極的に参加し、その評価を中心に取り組んだ。今年度は、昨年度の実績を踏まえ、コミッティメンバーが中心となり、「テーマ研究発表会」を開催するなど、生徒中心の企画への取り組みが始まった。
設立時のサイエンスコミッティの位置づけは、生徒自治会に所属する委員会ではなく、より自由な形でメンバーが関われる同好会の形式をとっていた。今年度もその形式を踏襲したため、4月最初の主要な活動は、新入会員の募集であった。その後7月には、高校3年生が総合的な学習の時間に取り組んできた「テーマ研究(卒業研究)」を校内外に向けて発表する「テーマ研究発表会」の計画・準備・実施(司会進行)・後片づけなど一連の企画を担当した。その後、9月に責任者(会長ほか)の引き継ぎが行われ、12月の講演会の事前打ち合わせ、3月の講演会の評価活動などにも取り組み、来年度はサイエンスコミッティ企画の講演会開催を計画している。
4月より、「我々の、SSH」をキャッチフレーズに、SSH事業への優先参加と運営・評価を活動の趣旨として、ポスターを作成・掲示し、集会で宣伝を行い、メンバーの募集活動を行った。しかし、思うように参加希望者は集まらず、最終的には理数系クラブの部員を個別に勧誘する形を取らざるを得なかった。
なお、会長は、9月に、高2生徒(化学部員・パーソナルコンピュータ研究会員)に引き継がれ、高1生徒の責任者(生物部員)も決められた。

5月には、今年度の活動計画が示された。
以下、9月に行われたコミッティの引き継ぎ資料(57期→58期,「 」で示す)をもとに報告する。
「発表会の時期は57期の場合、夏休み前の特別授業期間中であった。同じ時期に開くのなら、5月下旬には企画を動かしておくと余裕がある。まず担当の先生方と連絡を取り、そのうえで学年にテーマ研究発表会の計画書(兼アンケート)を配布、動向を調査する。この段階で発表に意欲的な生徒は皆無なので、適当な人を選んでおいて(各教科の担当の先生に発表できそうな人物について尋ねておく)、リストアップし、発表するかどうか聞いておくとよい。発表者が決まったら、リストを作って各担当の先生方に渡して、発表者への指導と協力をお願いしておくとよい。それと同時に、発表者に計画書を書いてもらい、また先生に相談する旨を確認しておく。発表形式は口頭とポスターセッションの2パターンを用意した。」
テーマ研究には、高3全員が取り組んでいるが、発表会の開催時期が早いこともあり、発表に積極的でない生徒が多い。生徒どうしのネットワークで、発表にふさわしい研究を発掘するのもコミッティの活動ならではである。このテーマ研究発表会の詳細については、p.14をご参照いただきたい。
今年度は、7月と12月実施の講演会等について、コミッティによる組織的な評価ができなかった。今後、3月の講演会については、取り組む予定である。
一方、12月実施の化学特別講座「ナノの世界」(p.49参照)については、講師の真船文隆先生(東京大学大学院准教授)が本校卒業生であることもあり、コミッティメンバー2名と講演内容やレベルについて、事前の打ち合わせを行っていただいた。その成果もあり、中学生から高校生まで幅広い学年の生徒がそれぞれのレベルで楽しみ、理解できる魅力的な講座となった。
(今年度の報告)「SSHに参加している全国の高校が一堂に会し、日ごろのSSHの成果を発表する、というもの。横浜で8月の第一週か第二週に開かれる。高校生同士であつまる数少ない機会であり、よい刺激になる。また発表の形式についても勉強になる。学校は発表が義務らしいので、発表するのもよいだろう。」
(昨年度の報告)「立命館大学で開かれる同じくSSH関連の行事。こちらは世界中から高校生が集まる。時期がちょうど文化祭準備~文化祭中(10月下旬~11月上旬)であり、全日参加は難しい。発表会はレベルが高く面白いとは思うが、その他の行事はあまり面白みがない。発表は英語で、国際交流という観点からすればよい経験になると感じた。」
サイエンスコミッティは、SSHの各事業への優先参加を謳っている。しかし、今年度は「SSH生徒発表会」(p.18参照)と12月実施の「東京都指定校合同発表会」(p.19参照)に参加したのみで、国際的な企画である“Rits Super Science Fair”(今年度はISSF,p.37参照)や12月実施の北京師範大学附属校訪問,参照)に参加したのは、コミッティメンバー以外の生徒であった。このため、参加した生徒による評価についても、SSH事業の評価に加える必要があり、教員によるアンケート等を実施したが、サイエンスコミッティがうまく関わる方法を考える必要がある。
「(生徒企画の講演会は、サイエンスコミッティの)意欲的な行動の結果として、実現したい項目ではあるものの、57期では実現できなかった。一応アンケートによる下調べをしてみたものの、わかったのは校内生の関心の低さだった。まずは校内全体にSSH行事の取り組みをもっと知ってもらう必要があると感じさせられた。」
一般生徒を対象としたアンケートでは、関心があまり高くない上に、招きたい講師やテーマが分散してしまい、企画を進める上で有用な情報は得られなかったようである。今後は、理数系に興味・関心の高いコミッティメンバーが原案を作成し、より多くの生徒の意見を参考に進めることになるだろう。
サイエンスコミッティ2年目の活動は、「テーマ研究発表会」の開催など大きく進展した内容もあるが、事業の評価など昨年度より後退してしまった部分があることも否めない。現在のような同好会的組織では、その時のメンバーにより、活動の量や質が影響されやすい。
来年度は、この2年間の成果と課題を踏まえ、生徒が中心となって企画する講演会の実施を目指すなど、より積極的にSSHに関わる組織として、恒常的な活動に取り組みたい。