b1.理科・化学分野

1.仮説

今年度は、講演会を3回実施した。うち2回は、中学生にも受講の機会を与えることで、化学の裾野を広げられるのではないかと考えて実施した。

簡単な導入から最先端の研究内容を聴くことで化学に対する知的好奇心を喚起できるのではないか。

2.内容・方法

  1. (1)「光が関わる科学現象」
    講師:
    市村禎二郎先生(東京工業大学大学院理工学研究科 教授)
    大場伸子先生(東京工業大学化学実験室 技術補佐員)
    日時:
    7月11日(金)
    場所:
    本校オープンスペース
    対象:
    希望者
    参加者:
    49名(高1:23名,高2:3名,中3:4名,中1:19名)
    実施内容:
    講義と演示実験、体験
    • 原子、分子とアボガドロ数
    • 光の波長とエネルギー、光の吸収と発光
    • レーザーとノーベル賞
    • 光の偏光、液晶
    生徒の感想:
    • 原子、分子から光のことまでよく分かった。
    • 電球と蛍光灯の発光スペクトル分布で蛍光灯の光がここまでバラついていることに驚きました。
    • とろけるチーズを使って光の波長を調べる実験が面白かった。
    • 光反応が生活にどう活かされているのかに興味がある。
    アンケート結果より:
    理解度:
    理解できた・まあ理解できた 85.7%
    満足度:
    期待通り・ほぼ期待通り 91.8%
    学習効果:
    学習に役立った 89.8%
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  2. (2)「分子の構造と核磁気共鳴」
    講師:
    下井守先生(東京大学大学院総合文化研究科 教授)
    日時:
    2008年11月29日(土) 13:10~16:00
    場所:
    東京大学教養学部
    対象:
    分析化学ゼミナール受講生
    参加者:
    高2 10名
    実施内容:
    講義と施設見学、演習
    • 電磁波と波長、電子スピン・核スピン
    • 化学シフトとカップリング
    • NMRの特徴、医療への応用(MRI)
    • NMR測定(施設見学、実習)
    • 芳香族化合物C9H12の異性体の分析(演習)
    生徒の感想:
    • 機器分析も人が読み解くという点で、他の分析実験と同じだと感じた。NMRのデータの見方が難しかった。いろんな予備知識も必要だった。
    • 最初の「電子スピン」の話から、今まで知らなかった内容で、すごく新鮮で面白かった。実際の実験結果から、分子の構造を解き明かしていく過程を体験できたのが嬉しい。
    • SSHの講演について、積極的意欲が湧いた。
    • とても面白い講座だった。物質を特定するための技術として、このNMRという技法がかなり前から取り入れられていたと聞くと驚きであった。内容はお世辞にも簡単とは言えなかったが、分かりやすいように話して頂けたので、100%とは言わないが、かなり理解できた。
    アンケート結果より:
    理解度:
    理解できた・まあ理解できた 89%
    満足度:
    期待通り・ほぼ期待通り 100%
    学習効果:
    学習に役立った 100%
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  3. (3)「ナノの世界」
    講師:
    真船文隆先生(東京大学大学院総合文化研究科 准教授)
    日時:
    12月19日(金)
    場所:
    本校オープンスペース
    対象:
    希望者
    参加者:
    42名(高1:15名,高2:10名,高3:1名,中3:15名,中1:1名)
    実施内容:
    • ナノメートルの世界の不思議
    • 気相クラスターのサイズ効果
    • クラスターのマジックナンバー
    • コンビナトリアルケミストリーによる超高速探索
    生徒の感想:
    • 小さな世界の不思議さをかいま見れて面白かった。複数元素からなるクラスターの研究は大変だけど、夢のある研究テーマだなと思った。
    • マジックナンバーの話が興味深かった。とてもわかりやすかった。
    • 難しい内容のこともあったけれども、分かりやすい説明であったため、ある程度理解できて良かった。身近な例が多く、実感できて良かった。
    • クラスター化学についてとても興味がわいた。
    • 金はどんな状態でも不活性の元素だと思っていたので、今日の話を聞いて化学は奥が深いんだなと感じた。
    • 全く知らないことが多かったので大変面白かった。このような化学もあると言うことを知れて良かった。
    • 物質を小さくしていくと性質が変わるのが面白かった。分かりやすかった。
    • 実験の時間制約は社会科学に通じると思った。ステンドグラスの話で、史料を読むと新しいことが分かるかも知れないと思った。
    • 内容が前半に関してはよくわかったし、後半についても全く理解できないものではなかったので、とても充実した良い時間を送ることができた。
    • 量子論や分子軌道論でクラスターの性質との関連性が分かり、非常に面白かった。
    • コンビナトリアルケミストリーのくだりには非常に好奇心をそそられた。
    • レアメタルの代替品の生成のアプローチの手段はあまり考えたことがなかったが、こんなところで1つ知ることができたのはとてもうれしい。
    アンケート結果より:
    理解度:
    理解できた・まあ理解できた 83.3%
    満足度:
    期待通り・ほぼ期待通り 95.2%
    学習効果:
    学習に役立った 95.3%
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3.検証

(1),(3)については、中学生にも受講の機会を与えたこともあり、講演内容は基本的なことから最先端の研究まで網羅していただいた。中学生には、最先端の内容は難しすぎるかと感じたが、目を輝かせて聴いていた。反対に、高校生には導入部分は簡単すぎるかと感じたが、普段の授業の導入とは異なる内容に、さらに理解を深めていたようである。(2)については、高校2年生の総合学習の時間で展開している選択講座「分析化学ゼミナール」受講生だけということもあり、ハイレベルな講義内容と演習であった。普段の授業では、芳香族化合物が未学習の段階であったにもかかわらず丁寧な講義内容によって理解をしていた。

アンケート結果からわかるように、いずれの講座も、生徒の化学に対する知的好奇心を喚起し、研究することの面白さを実感できる内容であったことがわかる。今後も、このような特別講演や特別実験講座を通して、研究することの大切さや面白さを伝えていきたい。

(文責:化学科・吉田哲也)

b2.理科・生物分野

1.仮説

昨年度に引き続き、中学生〜高校低学年生向けの入門的な内容のプログラムの方が、高校高学年向けの講演会よりも科学分野に対する生徒の興味関心を喚起するのに効果的である、との考えから、これらの学年を意識したプログラムの企画・実施が望まれた。また、講演会という形式にあまり拘らない柔軟なスタイルのプログラムが効果をもつか検討してみたいと考えた。

2.方法

平成20年10月より約3ヶ月間、国立科学博物館において開催された特別展示「菌類のふしぎ カビときのこと仲間たち」を取り込み、この特別展示の企画者、協力者の講演会、解説を合わせたプログラムを企画・実施した。また、中学2、3年次の理科第二分野の授業では、分解者のはたらきについての学習に絡めて、さまざまな身近な菌類の紹介、生態的役割について講義を行い、生徒の興味関心を高め、このプログラムに大勢の生徒が参加してくれるよう努めた。

2.1 プログラム内容

プログラムタイトル「菌類のふしぎセミナー」

日時:
2008年12月18日(木)9:00〜16:00
場所:
国立科学博物館 講義室、展示会場、レストラン
対象:
中学生、高校生の希望者参加者数:36名(中2:7名,中3:28名,高1:1名)
内容:
以下の①〜⑤の通り
  1. ①講演「菌類とはどんな生物か?」柿嶌眞先生(筑波大学生命環境科学研究科 教授)

    菌類の分類体系、菌類の特徴、疑似有性生殖過程、他の生物との生態的関係などについて、講演をして頂いた。学術的に専門的で発展的な内容も多分に含まれていたが、写真や図がふんだんに盛り込まれたスライドを交えながら中学生にもわかりやすく解説をして頂いた。柿嶌先生は本校前校長ということもあり、参加した生徒たちにとって講演者に親しみの持てる講演会であった。

  2. ②講演「“菌類のふしぎ展”の魅力」細矢剛先生

    (国立科学博物館植物研究部 研究主幹)「菌類のふしぎ展」の見どころ、菌類とわたしたちの関わりなどについてスライドを交えながら楽しく解説して頂いた。講演者の話術はこの特別展示のトークショウでも評判になるほどで、今回のプログラム内の講演でも生徒のレベルにあった話題や、ジョークをふんだんに交えた和やかな雰囲気の講演であった。

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  3. ③菌類のふしぎ展見学

    実際に自由に展示を見学した。ここで、お二人の先生にも同行していただき、随所で生徒たちに解説をして頂いた。圧巻は、多数のキノコの標本。とりわけ冬虫夏草の標本には多くの生徒が惹かれていたようだ。実物大の模型展示コーナーや、自分で顕微鏡観察できるコーナー、光るキノコの展示コーナーなどにも関心が集まった。この「菌類のふしぎ」展は、他の一般的な展示と違ってスティル写真に限ってだが、会場内での撮影が可能であった。こうした配慮は展示見学を学習に位置づけることができて大変有り難かった。したデジタルカメラで数多く撮影していた生徒も何人かいた。

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2.2 企画の事前準備

ランチョン・セミナーという新しいスタイルを実現させるため、博物館内のレストランを団体で利用することが可能か、事前の打ち合わせに時間を割いた。事前ワークシート、会場で実施する学習用ワークシートを頂けたことも良かった。

  1. ④ランチョン・セミナー 助言者:柿嶌眞先生・細矢剛先生

    施設内レストランで昼食をとりながら、展示内容についてお二人の先生に質問したり、菌類についての感想を発表したり、と和やかな雰囲気でセミナーのまとめを行うことができた。

  2. ⑤国立科学博物館常設展自由見学

    折角の機会でもあったので、常設展を各自自由に見学した後、解散とした。

2.3 生徒の反応・感想

生物分野のSSHプログラムとしては初の校外プログラムであったためか、授業での事前学習が功を奏したのか、普段のオープンスペースでの講演会と違って当初予想していた以上の参加希望者があって驚いた。講演会+展示見学+ランチョン・セミナーといった新しいスタイルも生徒には大変受けが良かった。

実は、この「菌類のふしぎ」展はマンガのキャラクターをフィーチャーしたこともあって、大手テレビ局が主催者として加わり、マスコミで大々的に取り上げられた。しかし、参加した中学生の中に、このマンガやそのキャラクターに強い関心を持つものは多くなく、生徒の参加動機にはなっていないようであった。純粋に科学的な興味関心から生徒が参加し、知識を深められたプログラムとなったことは喜ばしいことである。

以下は生徒の主な感想である。

3.検証

終了後かなり経過して実施したアンケートであったにも関わらず、生徒の自由記述が大変充実した。今までに生物科で実施してきた講演会などでもそうであるが、さまざまな未知の事象に興味関心を持ち、その情報に素直に向き合う姿勢は高校生ではより低学年に、また高校生よりも中学生に高い傾向がうかがえる。中学生高学年になると既知の事象との関連づけや、体系作りが自分の中で少しずつ可能になる。科学に対する興味関心を喚起させる、という目的では、この発達段階を取り込んだプログラムが効果的であることに確信を持った。

また、今回のプログラムでは、昼食を取りながら話し合う、ランチョンセミナー・スタイルを一部に導入してみた。これも、発言のしやすい雰囲気作りには効果的であった。このような特別展示とその関係者による講演会を組み合わせたプログラムが可能であれば、できるだけ企画・実現していきたいと考えている。

(文責:生物科・仲里友一)